修繕積立金の見直し①~修繕積立金が不足する理由~

メディアでマンションの「修繕積立金の不足」が度々取り上げられている。

マンションによって状況は様々だが、修繕積立金が不足しているマンションが数多く存在することは事実。

この問題は今になってわかってきたことではなく、すでに国土交通省も2008年に「長期修繕計画作成ガイドライン」を、2011年に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を公表するなどして、長期修繕計画に基づいた適正な修繕積立金の設定を行うことの重要性について啓発をはかっている。

 

しかしながら、なぜ修繕積立金は不足してしまうのか?

 


 

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修繕積立金が不足する理由

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①工事費の上昇

近年、オリンピック、アベノミクス、東北の震災復興、消費税増税、建設業界の人材不足などなど様々な要因で工事費が上昇している。10年前と比較して20~30%程度上昇しているともいわれている。

そして、このコロナ禍。工事費の上昇は先読みができないくらいの状況といってよいかもしれない。

わずか数年でここまで工事費が上昇するとは誰も予測しておらず、修繕積立金の算出根拠となる長期修繕計画の修繕費(支出)も見直しをせざるを得ない状況になっている。

過去には「管理会社が設定する長期修繕計画の工事費は高い」といわれていたことあったが、昨今の工事費はそのあるはずだったゆとりを超えるケースも少なくない。

 

②修繕積立基金

新築時の購入に際し、購入者は「修繕積立基金」として一定額を管理組合に前納している。このことが忘れられていることが多い。

新築時の長期修繕計画は、ここからスタートし、月々支払う修繕積立金とあわせて、築後20~30年間の修繕費を賄う試算の計画となっている。

そのため、その先については、修繕積立基金が無い前提で修繕積立金を積み立てる必要が出てくるということになる。

修繕積立基金がない時代には「一時金徴収」や「借り入れ」で修繕費の不足を補ってきたマンションもあるが、昨今は早めに修繕積立金を値上げすることで、各所有者の負担を軽減する対応がとられることが一般的となっている。

 

③更新工事

当初の長期修繕計画は20~30年計画で、その中で計画される工事はほとんど「補修」という内容となっている。一番の出費となる外壁等大規模修繕工事も部分補修や塗装がほとんどである。

しかし、20年を超えると、様々な「更新(入れ替え)」の費用がかかってくる。

機械式駐車場やエレベーター、サッシ、受水槽、ディスポーザー設備、各戸のサッシや玄関扉などの更新は、当初の長期修繕計画には無いプラスの要素となる。

大規模修繕工事も通常は「お化粧直し」という上塗りや部分補修を中心とした作業になるが、3回目以降にもなると、新築時の塗膜の付着力低下による既存塗膜の撤去、屋上防水においては既存防水の撤去・更新といった修繕項目を追加しなければならないタイミングも出てくる。

以上のような更新の要素が追加されることから、長期修繕計画を見直した際には、当初の長期修繕計画よりも全体の修繕費(支出)が増えてしまうということになる。

 

④修繕積立金値上げの回避

修繕積立金の値上げをできるだけ回避・圧縮しながら運営をしてきた管理組合はたくさんある。

また、多くのマンション管理士や設計コンサルタントが従来は節約の方向でコンサルティングを行っていたことであろう。

そのようなこともあり、当初の長期修繕計画では、修繕積立金を数年毎に改定する「段階増額方式」で算出されていることがほとんどであるが、この初期設定どおりに増額改定を行っていないケースは少なくない。

マンションによっては、管理会社の説明どおりにこの当初計画の増額改定を決定事項として運営しているところもあるが、皮肉にもそういったマンションの方が、昨今の修繕積立金不足の影響の煽りを受けていることが少ない。

 

 

できるだけ出費を抑えようと思うのは誰しも同じだが、マンション管理組合を一個人として考えれば、修繕積立金は出費ではなく「将来への備え」となる。

戸建住宅では、修繕資金を確保して将来に備えていない場合は、いずれボロボロの廃墟になってしまう。

個人であればそれでよいかもしれないが、共同住宅であることや建物の耐用年数を考えれば、マンションはそういうわけにもいかない。

 

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